光陰は矢の如く過ぎ去り、また新しい暦の頁を捲る季節が巡ってきました。
「新年」という区切りは、物理的な時間の連続性の中では一つの通過点に過ぎません。しかし、立ち止まり、背後を振り返りながら、再び前を向くためには我々人間には不可欠な知恵なのだろうと思います。
僕にとって音楽とは、、心との対話であり、同時に社会や他者との接点を結ぶものでしょうか。昨年も、多くの舞台や稽古場で、音符の背後に潜む「心」の震えに触れる瞬間が多々ありました。それは時には、言葉では言い表し得ないような孤独を感じることもあり、停滞しがちな感情を静かに押し進めてくれる、そんな複雑な喜びの感情でもありました。
本年、バリトン歌手としての私は、さらに一層の研鑽を積み、表現の深奥を追い求めていきたいと考えています。声という、肉体に宿る最も根源的な楽器を通じて、作品が内包する真実をいかに純粋に紡ぎ出すか。技術的な熟達の先にある、聴き手の心の琴線に触れるような、魂の昇華としての音楽を届けること。それが、この道を歩む者としての変わらぬ責務であります。
また、合唱指導者として、心を同じくする団員の皆さんと共に歩む時間は、私自身の生きる糧でもある。合唱とは、個々の声が溶け合い、一つの理想に向かって精神性を高めていく共同作業です。決して平坦ではない道のりであっても、懸命に課題に向き合う皆さんの姿から、私自身が教えられることも少なくありません。本年も、単なる技術の習得に留まらず、音楽が持つ偉大な力によって、皆さんと共にまだ見ぬ音楽の「高み」へと辿り着けるよう、誠心誠意、導き手を務めたいと願っています。
さらに、プロデューサーとしては、良質の舞台公演という「場」の創造を支えることに尽力したいと思っています。一つの舞台が結実するまでには、無数の祈りと、目に見えぬ緻密なサポートが必要である。演者と観客が、日常を離れて芸術の真髄を分かち合えるような、誠実で清澄な空間を形作ること。それは、音楽という文化への恩返しであり、私に与えられた重要な役割の一つであると思っています。
新しい年、未だ見ぬ音楽との出会いに胸を躍らせながら、一歩一歩、歩みを進めていきたいです。
本年も、変わらぬご厚情を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
大谷 圭介.